Embrasser <in English, "embrace">

The diary of Commy who explore and crawl into the world of NIN and Trent with The Fragile.

Pretty Hate Machine
Pretty Hate Machine

このファースト・アルバムのアートワークは「肋骨に見えるように加工した、ある種のタービンの写真」である。トレントは歌詞の中で人間を機械(マシーン)に例えるのが好きだ。タービンは心臓を意味するのかも知れない。そして「肋骨」、つまりアダムとイヴのことを指すのであろうか。

だとしたら「プリティ・ヘイト」な「マシーン」は『人間』、トレントが男と言うことを考えると女とも取れる。また「アダムとイヴ」になぞらえるのならば、「人間の原罪」をも意味するのかも知れない。つまり、「ちょっと嫌いな人間」、『原罪をも受け入れる愛情』と言ったところか。よく見てみると写真の色も鮮やかなブルーとピンク、男女をイメージしたとしてもおかしくはない。

しかし、インナーには椅子の上でちょっと不自由そうに体を左右に揺らすトレントの写真だけがある。何となく不満げで寂しげ(写真全体の色も明度の低いブルーだ)にも見える。

このアルバムの中には、恋するもしくは愛情に苦しむ姿の描写が多い。「sin」なぞはその筆頭だろうし、「ringfinger」はとてもロマンティックにその苦しみが描かれている。ちょっとマゾヒスティックなくらいだ。「sanctified」もそれと似た表現と言える…「彼女が望むなら、全てを捧げよう」と言う風に。ああ、この時彼には大変好きな人物が存在したのだろう、と容易に想像できる。しかし、うまく行っていなかったのか、相手に訴えるタイプの歌詞が目につく。その寂しさがあのインナーの写真を選ばせたのだろうか。>>

音的には、発表が80年代も終わりと言うこともあってかなりポップだと思うが、トレントが音楽に心奪われた理由がシンセサイザーだったことを考えると、ある意味トレント流の80年代集大成と言う感じもする。私は彼と音楽経験がほぼ同年代なので、違和感なく入っていける世界だった。自分が愛聴していた音楽の端々が見え隠れしているし、彼が「シンセに人生を捧げたい」と言うほどそれに心奪われた理由もよくわかるからだ。80年代音楽とシンセは切っても切れない関係だと思う。私もやっぱりシンセの音は好きだ。10代後半から20代の、最も精神的に思い悩む時期にそれに夢中になった名残と言うことか。

いまだにライヴではこのアルバムからの曲が多く(「head like a hole」「terrible lie」「 something i can never have 」「sin」「 that's what i get」など)、またトレント本人も「今も「head like a hole」を聴いてくれる人は大好きだ」と言っている通り、ここにはninの原点がある。

「ポッピー・アルバム」と言われながらも、やはり外すことは出来ない。名曲の数々と共に、そこにトレント・レズナーの「一人立ちする覚悟と決意」が強く感じられるからだ。完璧なものであるとは言わないが、『道に迷ったら初心に返れ』と言う言葉の通り、これはトレントの中で重要なウェイトを持つ世界なのだろうと私は思う。行く先に思い悩んだ時、トレントはここに戻って自己を取り戻すのだろうか。
<1997年初出>

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